2018年元旦、天皇杯決勝が埼玉スタジアムで行われた。
セレッソ大阪が延長戦の末に横浜F・マリノスを2-1で破り、初優勝。
ルヴァンカップと合わせて今季の国内二冠を達成した。
昨年まで、J2で戦い、無冠のチームがなぜ、急激に強くなったのかを探ろう。
横浜FMは前半8分、DF下平匠がゴール前へアーリークロス。
相手DFのマークを巧みに外した伊藤が受けて、ワントラップからC大阪のGKキム・ジンヒョンとの1対1を冷静に決め、先制ゴール。
後半20分、MF水沼宏太がゴール正面で強烈なミドルを放つと、横浜GK飯倉大樹が弾いたボールを横浜DFがクリアミス。
それを山村が、右足シュートを決めて1-1と試合を振り出しに。
そして延長前半5分、左サイドからシンプルなクロスをファーサイドに送ると、横浜FMのGK飯倉が飛び出しながらボールに触れずに被ってしまう。
すると、そこに走り込んできた水沼が角度のないところからヘディングシュートを決めて2-1と勝ち越した。
守備を固め、C大阪が2-1で逃げ切り、勝利を収めた。
C大阪はACLに行ったり、J2に降格したりと波が激しいチーム。
このチームを2017年に就任した尹晶煥監督が安定感のある強いチームに。
一体何がなされたのか?
セレッソで10年プレーし、紆余曲折を味わってきたキム・ジンヒョンが次のように語る。
レヴィー(クルピ=G大阪新監督)は『美しいサッカー』『楽しいサッカー』を志向する監督で、最終ラインからビルドアップして攻撃するのがメインだったけど、尹さんになってからはゴールキックを蹴る回数がすごく増えて、自分も足が痛くなるほどだった(苦笑)。
尹さんは『勝つサッカー』を求めてシンプルにタテを突いていく攻めを増やしたんだと思う。
リードして5バックにすることもそう。
今日も水沼の2点目の後に5バックにしたけど、ああやってみんながお互いを助け合う守りができるようになったのも大きい。
華麗にパスを回し、攻撃に重きをおいたサッカーの前提として、「強固な守備の構築」に時間を割いた。
そのため、始動時から3部練を行うなど、ハードな練習を課すことにより、意識改革に着手。
実際に今シーズン、後半でリードすると、天皇杯決勝と同様にFWの山村をDFの位置に下げ、5バックで守備を固め、逃げ切る戦術を多用して成功している。
このように、戦い方が徹底されて、きたことが大きいのでは。
監督の描く理想をうまくチームに浸透させなければチームは強くならない。
このことに貢献したのが、鳥栖在籍時も尹監督に師事した水沼選手。
全員に攻守のハードワークを求めるスタイルにC大阪の選手は不満を漏らすこともあったが、そんな時に指揮官の意図の伝達役となり、チームの一体感を保つことに腐心したのが水沼だった。
水沼選手は次のように語る。
「最後まで走り切らない選手は必要とされないのが尹さんのサッカー。
僕は華麗なプレーはできないけど、そういう姿は見せようと意識してきた。」
そんな水沼選手は天皇杯で大活躍を果たすのも、神様からのプレゼントだろうか。
水沼選手は天皇杯の準決勝では、後半アディショナルタイムに奇跡の同点弾、さらに決勝では延長前半に勝ち越し弾。
神ってますよね。
2017年シーズンは、リーグ戦で川崎F、ルヴァン杯と天皇杯でC大阪が制した。
2チームともタイトルを取ったことがなく、ここ一番で勝てない勝負弱い体質があった。
大事な試合で勝てない経験しかないと、プレッシャーに負けることも多いのではなかっただろうか。
今回、C大阪はルヴァン杯を制しているためか、慌てていない。
ルヴァンで優勝してからチームに自信と余裕が出てきたこともあって、同点にできる自信はみんなの中にあった。
負けているからといって焦ることはなかった。
と山口蛍選手も言うように、集中力を切らすことなく反撃のチャンスを伺い続け、見事に後半に追いついている。
成功体験が相乗効果で強くするようだ。
J2から昇格後、タイトルを取るのは2014年、G大阪の3冠以来である。
来年度はJリーグ各チームがC大阪を研究してくる。
また、ACLに出場するので、過密日程が強いられる。
来年、いかに戦うかによって、C大阪の真価が問われるだろう。
同じ大阪のG大阪も3冠翌年は天皇杯を制したが、それ以来、タイトルを取れず、今年のリーグ戦は10位と低迷している。
C大阪はG大阪の二の舞にならないよう戦ってほしいですね。
また、G大阪もライバルC大阪で長く指揮を執ったクルピを監督に就任させた。
この2チームによる大阪ダービーも目が離せませんね。